今までずっと黙っててんけど俺には実は秘密があんのや。
え?いきなりなんやって?いいから黙って聞きや!
自分で言うのもなんやけど運動神経抜群で生活態度も優秀。
まさに聖書のような学生生活をおくっとる俺は実は・・・

現代に生きる魔女でした。


・・・こらそこ!ポカーンってしない!
まあ、正確に言うんなら「魔女の血を継いどる」って言うた方が近いんかな?
なんでも白石家の遠い遠い先祖の血が3〜4代に一度先祖がえり?とかいうんで出てくるらしい。
で、その先祖がえりが俺に出たわけやな。
・・・あーやっぱ「何やのこの話」って顔しとるな。
まあ、俺も最初この話聞いたときしばらく意味わからんかったからなぁ。
なんてったって魔女やで?魔女。
それやったら先祖も空気読んで1,2年待てや!何で男の俺が魔女やねん!とかめっちゃ思った。
でもなぁ、だんだん魔女の力の使い方もわかるようなってきて「これはこれでええかなー」とか思うようにもなったなぁ。
え?何ができるんかって?
そうやなー財前やらがよお見とるやつみたいに銃だの爆弾だのを出したりはできひんなぁ。
炎とか雷出すんもアウトやと思う。
・・・何もできるもんないやんけ…ってお前失礼やな!
確かにそんなド派手なんは出来ひんけども薬作ったり毒作ったり毒作ったり…
あとな!人の心を操ることができるんや!

そう言って白石は衝撃の告白の直後、すさまじいドヤ顔で俺を見つめてきた。
正直言うと白石のことは好きやけどこのドヤ顔はいらっときたので「へー、そうなん」とだけ返しておいた。
あかんわ。財前に勧められてみた漫画めっちゃおもろかった。
台詞とか意識せんでもスッて出てきそう。知らんうちにオブラートんこと八橋とか言ってたらどないしよう。

「え、いや、そうなんっておま・・・もうちょっとなんか言うことあるやろ!」

俺のこのドライすぎる反応は予想出来ひんかったらしい白石があわあわしとる。
いっつもとりみださへん白石があわあわしとるん見るんは思いのほかおもろい。

「なあ、白石。自分何でもそつなくこなすように見えても結構おっちょこちょいやなぁ。」

そう俺が言うてやればさっきとは逆に白石がポカーンしだした。
実を言うと白石が俺に・・・正確に言うと俺ん周りに何かしとったんは気付いとった。
なにをどうしたのかは知らんかったけど・・・今さっきの話を含めて考えると魔女の力で何かしたんやろう。
で、何でいきなり俺に魔女のことをカミングアウトしてきたか・・・「俺が」考えつくんはただ一つ。

「お前、俺にも魔女の力つこうたんやな?」

そう聞いたとたんポカーン状態やった白石が反応した。
どんだけ長うポカーンしとくねん。
白石のドヤ顔からして俺につこうたんは心を動かす力やろ。
そこまであてるといよいよ白石は驚いたようやった。
確かに今まで何も知らんと思うとった親友が普っ通に魔女だのなんだのの会話について来たらそうなるわな。
でもな、俺にはわかんねん。そしてその力もきかへん。

「なあ、白石?白石の力強い方やと思うけど流石に本職にはきかへんよ?」

そう、白石が魔女の血を継いでいるように俺にも異形の血が流れとる。
俺に流れとる血は妖精。
ちゅーても子供向け番組で見かけるような羽が生えた可愛らしいものとはちょっと違う、らしい。
力を込めた歌や、踊りや、言葉その他もろもろで異性を闇に引きずり込む存在。
それゆえに「人の心を操る」ことにかけて妖精の右に出る者はいない、らしい。
白石も今ので俺の招待に気付いたんか、ふっと笑った後、「かなわんなぁ」ってつぶやいた。
白石のこういう、だまされたとかいろいろ言わんで一言で流してくれるとこめっちゃ助かるわ。

「ま、最初はたがいにびっくりしたけど同じオカルティック仲間としてこれからもよろしゅうな!」1

あえて仲間を強調して白石に話しかける。
ほんまはしっとる。白石が俺に「好意っぽいものを持ってる」ってこと。
けどまだ「っぽい」やし。
まあ、その「っぽい」の時点で白石は俺の周りに何かしよったわけやけど。
「っぽい」がとれるまでぼちぼち待ったろうかな。
いつか来るそん日までは、まだ仲間でええわ。

素材拝借元人形首 inserted by FC2 system