家に帰ると俺はまずバケツに水を張り、今日買ってきた菊を丁寧にその中に入れた。
買った後に明後日あの人のところへ行く直前に買えばよかったと思ったけども買ってしまったものは仕方ないので明後日までしおれないでいてくれることを切に祈ろう。
自室に入りテレビをつけると途端に目に飛び込んできた「Halloween」の文字になんだかつまらなくなってそのまま消した。
あの人にdolcetto o scherzettoなんて催促することはおろか、あの人とこの日を過ごしたことも一度もなかった。
それほどに短い付き合いだったけどそれでも俺の中であの人は確かに特別なのだ。
できるならあの人ともっと一緒に過ごしてみたかった・・・と思う。
そして、あの人のサッカーにもっと触れてみたかった、とも。
「ミスターK・・・・・・」
あの人の祖国である日本にはお盆という行事があって、それは死者を偲ぶ日のように墓参りをし、そして死者があちらから帰ってくる日らしい。
正直よくわからない表現も多かったがそれでも。
死者を偲ぶ日とそのお盆という行事が似ているのなら・・・・・・
「来てくれたり、しないかな・・・」
ベッドに寝転がり、そっと目をつぶる。
疲れていたのか途端に睡魔がやってきて意識が薄くなっていく。
瞬間脳裏に映ったのは今日あれほど見たオレンジや紫ではなく、あの人の金と白だった。